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名古屋高等裁判所 昭和25年(う)525号 判決 1950年6月30日

被告人

山口義隆

主文

本件控訴を棄却する。

理由

弁護人大池龍夫提出に係る控訴趣意は後記の通りであつて検察官は本件控訴は理由のないものとしてその棄却を求めた。

仍て按ずるに本件記録によれば論旨摘録のように原審の昭和二十五年一月二十三日の公判期日において所定の公判手続が行われた上一旦弁論終結となつたが同月三十日弁論再開となり即日結審となつたこと及び再開前の公判手続においては立会検察官の事実上並びに法律上の意見の陳述がなされたけれども再開後の公判手続においてはその意見の陳述がなされなかつたことは所論の通りである。而して刑事訴訟法第二百九十三条においては「証拠調を終つた後検察官は事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならない」と規定し、検察官の事実上並びに法律上の意見の陳述がその職責たることを明らかにしており従つて裁判所としてはその陳述の機会を与えねばならぬことは勿論であるが再開後の本件訴訟手続において裁判所がその意見の陳述を阻止したと認むべき形跡が存しないのみならず再開後の訴訟手続はその更新された場合と異り依然再開前の訴訟段階における効力を保有しているのであるから検察官としてはその後の訴訟手続によるもそれ以上附加すべき意見がないとして陳述をなさなかつたものと考えられるから原審がその機会を与えたに拘らず検察官が意見を陳述しなかつたと推定し得るのであり且つ裁判所としてはその機会を与えた以上更にその意見の陳述を強要すべきものではない従つて本件再開後の訴訟手続において検察官がその意見の陳述をなさなかつたことは本件訴訟手続の効力に何等影響を及ぼし得ることでないのであり論旨は独自の見解にたつものであつて採用し難い。

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